令和2年7月14日から家賃支援給付金の申請が始まりました。
事業者のみなさんが大変注目していた給付金です。
申請の方法などの詳細は、ポータルサイトなどをご覧いただくとして、弁護士の視点で気になる点を少し記載しておきます。
(2020/7/31時点の情報です)

情報サイト

家賃支援給付金は、国の制度です。
詳しくは経済産業省のページや申請用のポータルサイトをご覧ください。
https://www.meti.go.jp/covid-19/yachin-kyufu/index.html
https://yachin-shien.go.jp/index.html

東京都は、国の制度を補完するために、家賃等支援給付金の制度を準備しています。8月中旬から申請可能となる予定です。詳しくは、東京都のページをご覧ください。
https://www.bousai.metro.tokyo.lg.jp/taisaku/saigai/1007261/1009978.html

国の制度に先行して(またはこれから追加になるところもあるかもしれません)、都内の市区町村では独自の家賃の支援制度があります。家賃支援給付金を申請する際には調整されることになっています(中小法人等向け申請要領原則2-4-4)。
下記は市区町村の支援制度の例です。
新宿区港区文京区江東区立川市町田市小平市日野市狛江市西東京市

申請する際に読むべき資料

補助金、助成金等を申請する際には、募集要項をくまなく読み込むことから始めます。
家賃支援給付金についても同じです。
https://yachin-shien.go.jp/index.html
前述した申請サイトのトップページには、「資料ダウンロード」の部分に、中小法人等と個人事業者等に分けて、それぞれに、「申請要領原則(基本編)」「申請要領別冊」「給付規程」があります。まず、「申請要領原則」 を読み込み、必要な部分の「申請要領別冊」 を確認し、あいまいな部分は、「給付規程」でも確認します。
それでも分からない場合はコールセンターに確認となりますが、経済産業省のページ に掲載されている「よくあるお問合せ」についても確認するとよいでしょう。
https://www.meti.go.jp/covid-19/yachin-kyufu/index.html

弁護士の視点で気になる点

それでは本題に入ります。
私もみなさんと同じように申請要領や給付規程を読み、また、コールセンターに確認いたしました。
この制度は、持続化給付金のように資金の給付を申請するものではありますが、自分だけで完結するものではなく、第三者である賃貸人(大家さん、地主さん)との賃貸借契約に大きく影響する点に特徴があります。
申請書類として原則、賃貸借契約書が必要になりますが(中小法人等向け申請要領原則 3-5-3)、契約書の記載内容と実体が異なることはよくあります。このような場合には、賃貸人に協力してもらい様々な証明書の提出が必要になりますが(中小法人等向け申請要領別冊2)、日頃から賃貸人との良好な関係を築けていないと、スムーズに協力が得られない可能性があります。
また、実は賃借人も気づいていない契約違反があり、申請の過程でそのことが賃貸人に発覚し、トラブルに発展するケースも考えられます。
給付金を申請したはよいが、結局、賃貸人と揉めてしまい、経営がうまくいかなくなってしまっては本末転倒ですので、賃貸借契約に関して何か気になる点があれば、給付金の申請の前に、是非、弁護士に相談していただきたいと思います。
以下、いくつか気になる点を記載します。

まず、申請をすると、ご本人だけではなく、賃貸人又は管理会社に給付通知書が発送されます(中小法人等向け申請要領原則4-2)。つまり、賃貸人等に知られることなく申請することはできないということです。
この給付通知書を受け取った賃貸人等としては、当然、以後の家賃(又はこれまで支払を猶予していた家賃)の支払を期待します。万が一、申請者が資金繰りが厳しく、受け取った給付金を家賃以外の経費の支払に当ててしまった場合は、賃貸人等としては納得ができず、その後の家賃の支払が厳しくなったときには、免除、減額、支払猶予のお願いをしても、認めてくれないかもしれませんし、その後家賃の滞納が続けば、賃貸借契約を解除されるかもしれません。

また、住居兼事業所として利用している場合には、事業用の家賃として税務申告をしている部分のみ給付の対象となります(個人事業者等向け申請要領原則 2-3-1)。仮に、賃貸借契約書には「居住用」と明記されていて、賃貸人が事業に利用することを承諾していない場合、賃貸人等に給付通知書が届くと、事業用に利用していることが発覚します。
もちろん賃貸人の承諾を得ていないことがいけないのですが、給付通知書で初めて発覚するよりも、事前に賃貸人に説明して承諾を得ておくことによって、賃貸人とのトラブルを回避できるかもしれません。

転貸の場合にも同じようなことがいえます。
具体的には、賃借人(転貸人)は、自らが使用・収益する部分については給付の対象になります(中小法人等 向け申請要領原則 2-3-1)。仮に、賃貸人の承諾を得ずに一部転貸(間貸し)をしていて、自ら使用・収益している部分についての給付金を申請した場合、給付通知書に書かれた給付額により、無断転貸が発覚する可能性があります。こちらも、先ほどのケースと同じ懸念があります。

話が少し変わりますが、申請には、原則として、申請前の3か月間の賃料の支払実績が必要になります。しかし、賃貸人から免除や猶予を認める証明書(支払免除等証明書)をもらえると、最低限、申請日から1か月以内にひと月分支払うと申請できることとされています(中小法人等向け申請要領別冊2-9) 。
まず、仮に3か月払っていない事業者の場合には、最低限1か月分は資金調達をした上で払わなければ給付金の申請ができませんので、申請後の給付金の入金時期を想定した上での資金繰り計画に注意しなければならないことはいうまでもありません。
次に、この支払免除等証明書には、(免除・猶予の事前合意・猶予の追認) のいずれかを○で囲む書式になっています。つまり、仮に直前の1か月分しか払っていない場合、その前の2か月分の未払については、賃貸人が猶予を認めてくれればよいですが、賃貸人が認めない単なる滞納の場合には、給付金の申請ができないということになります(コールセンターにも確認しました。今後運用が変わるかどうかは分かりません)。
従って、給付金の申請をするためには、賃貸人に最低限支払猶予の追認がもらえるよう説得することが必要になります。説得がスムーズにいかない場合や、賃貸人から追認の前提として気になる条件が提示されるようなときには、弁護士に相談した方がよいでしょう。
賃貸人が認めてくれないけれどもどうしても給付金を申請したいというような場合には、原則どおり3か月分を払ってからの申請となります。この場合には、先ほど以上に資金繰りに注意してください。また、3か月滞納しているような場合、そもそも、事業継続自体が困難な状況に陥っている可能性があります。その場合にも、給付金の申請よりももう少し広い視点で、事業の方向性そのものについて弁護士に相談されるとよいでしょう。